小説と香水には、どこか似ているところがあるように感じています。
どちらも目には見えないのに、人の記憶や感情に深く残り、その瞬間の空気まで閉じ込めてしまう不思議な力を持っているのです。
お気に入りの香水をまとって小説を読むと、物語の世界がより鮮やかに広がり、自分自身もその物語の中に溶け込んでいくような気持ちになります。
私は静かな夜に、小説を読む前にほんの少しだけ香水をつけることがあるのですが、これが中々いい感じなのです。
手首や耳元にやわらかく香りをまとわせると、気持ちがゆっくり切り替わって、「これから自分だけの時間が始まる」という感覚になれます。
ページをめくるたびにふわりと香りが漂い、その香りと一緒に物語の情景が心に刻まれていくみたいでとっても心地いいんです。
また不思議なことに、読んでいた小説と香水の香りは記憶の中で結びつくことがあります。後になって同じ香りを感じたとき、そのとき読んでいた物語や、胸がきゅっとした場面まで鮮やかによみがえるのです。
まるで香水が、小説の思い出をそっと閉じ込めてくれているように感じます。
甘くやわらかな香りの日には恋愛小説を読みたくなりますし、少しスパイシーで大人っぽい香りの日には、ミステリアスな作品に惹かれることもあります
その日の気分や香りによって、選びたくなる小説が変わるのも楽しいところです。
小説と香水は、どちらも日常を少し特別にしてくれる存在なのだと思います。忙しい毎日の中で、自分の感性をやさしく満たしてくれるものに囲まれる時間は、とても贅沢で大切です。
お気に入りの香りをまといながら物語に浸るひとときは、私にとって心を整える小さなご褒美といっても過言ではありません。