日常に新しい風を吹かせたい時にパンチの効いた小説を無性に欲することがあります。とてつもないパワーを持つ主人公が登場する物語や社会の常識を打ち破るような力が宿った作品を読むと爽快な気分になることを経験してきたからです。それらはまるでプロテインのような栄養を心に与えてくれる作品でもあります。そんな私にとって最強のプロテインを与えてくれたのは、女性作家が書いた短編小説でした。
主人公の女性は上手くゆかない仕事にヤキモキした気持ちを抱きながら、交通網がストップした雪が降る夜の街を歩き続けた結果、おしゃれなバーに辿り着きます。道すがら転んでしまい、頭から出血しながらもカウンターに座り横を見たら何とも面白そうな奇抜な女性客が座っていたのでした。この2人は毒が籠ったシュールな会話を楽しみながら朝を迎え、高いテンションを保ちながらもバリ島へ旅立ってしまうのです。長旅と疲れで観光もせずただただ寝るだけのバリ島での数日間は、日本にいるのと同じような日常でもあり高い行動力の代償を得た特別な時間でもあったのでした。この2人のようにすべてを投げ打って短いバカンスへ行けるほどの行動力がないため、読み終わった時は潔い開放感に包まれて部屋の中で笑ってしまいました。この無謀なバカンスから帰国した女性達がその後どんな生き方をしたかは分かりませんが、これを機に少なからず何かが変わったのではないかと思います。そして私もこの小説に出会ったことで、時にはハメを外して楽しむ事を教わったのでした。