すごい小説を読みました。一度ページを開いたら止まらなくなってしまい、ノンストップという言葉がぴったりといったスピードで完読しました。この小説は殺人鬼である女性の半生を描いたものです。殺しに手を染めてゆく主人公の短絡的で自己中心的な行為は許しがたくも、どこか同調してしまう自分がいました。それは同じ女性の「さが」なのかもしれません。
主人公の心には深い闇とコンプレックスがあります。親の虐待を受けかつ残虐な事件のトラウマもあったのでしょう。幼い頃の経験が引き金となり歪んだ人格を作り出してしまったのかもしれません。特にコンプレックスや嫉妬が心の中で増幅してゆくことは、とても恐ろしいことだと改めて知りました。また生まれてくる子供に家族を選ぶことはできないこと、宿命ともいえるこの残酷な現実はとても心が痛みます。同時に成長過程における環境がいかに大切かを感じました。
最も度肝を抜かれたのは、ラストに突き付けられる思いも寄らない真実でした。それは今まで綴られてきたストーリーを覆すほどのインパクトと衝撃だったのです。衝撃は余韻と供にまるでかさぶたのように胸に残るところが、この小説の面白さだと思いました。今まで味わったことのない作品を読んだことで、また読書の面白さを再認識したのでした。