それぞれの心にある誰にも見せたくない闇を繊細に描いた小説を読みました。この作品はカフェや古書店、ドラッグストアや会社などが入った雑居ビルを舞台にした短編小説が寄せ集められたものでした。そのビルは主人公達が働く場でもあり、人々が行き交場でもあります。この本を読んでいると、みんな何気ない顔をして日常を生きているけれど、それぞれの心の中や背景には重い荷を抱えているものなのだと感じました。
IT会社で働く女性の恋愛を描いた物語は、特に印象に残っています。プロレスが大好きで商社マンに恋しているどこにでもいる可愛らしい女性が主人公だったことに親近感を覚えたものです。この作品で最も好きな所は、恋をしながら自分の奥底に眠る過去の思い出と向き合い、今の自分を見つめてゆくところでした。そして大好きだと思っていた男性に告白するも自ら付き合うことを断るのです。その理由は、商社マンの男性から問われた言葉を素直に受け止め、「この男性のことを本当に好きなのではない」と感じたからでした。この女性が出した答えはとても潔くて好感が持てました。またイケメンで肩書きもよくて非の打ちどころのない男性にもまた悩みや苦悩があることを知りました。
「隣の芝生は青い」という言葉がありますが、自分に無いものを持っている人のことはついつい美化してしまい羨ましく思うものです。しかしながらサラブレッドのようによい条件で生きているように見えても、悩みがあり苦悩があることは誰しも同じなのです。こうしたことを考えると、生きることは大変だと思うと供に奥深さと平等さを感じたのでした。
心もお腹も満たされる手土産
女性誌に掲載されていた「手土産特集」を読みました。世の中にはこれでもかというほど美味しいものが溢れていることに気付かされ心が弾みました。以前から雑誌やエッセイにも登場していて気になっている可愛らしい缶に入ったクッキーや、イチゴと生クリームをチョコレートでコーティングしたスイーツなど、見ているだけでよだれが垂れてきそうでした。お昼ご飯を食べた後にも関わらず「スイーツはべつばら」と腹の底から感じたものです。雑誌には甘い物やおせんべいなどのお菓子は基よりサンドイッチや焼き鳥の詰め合わせなど、酒好きやパン好きにも喜ばれる美味しい物達もたんまりと掲載されていました。そしてこの書籍を読みながら以前古都と呼ばれる街を訪れた友人から貰ったお土産を思い出したのでした。それは黒糖を使ったパンでした。その街では有名なベーカリーの人気商品だそうで、一口食べた時に感じた優しいお味は今でも記憶に残っています。しっとりとしていて丁度良い甘さのため幾らでも食べることが出来ると確信したほどでした。私の住んでいるところからは少々遠いため古都の街に足を運ぶことはなかなか出来ませんが、もしその土地を訪れることがあれば必ず購入したいと思っております。
老舗店の和菓子、有名店のクッキーやケーキ、その街にしかない名物店の商品など、挙げてゆくと人に喜ばれる手土産は実にたくさんあることに気付かされます。貰うことも大変うれしいものですが、送る方の顔を思い浮かべながら「あの人が好きなもの」を考えることも楽しい時間だと感じます。
美しいシンガーから学ぶ美
ラジオ番組を聴いていたらとっても耳寄りな情報が流れてきました。それは兼ねてらファンである女性シンガーが手掛けた「美」に関する本についての紹介でした。私が学生の時から活躍されており、シンガーとしての楽曲の素晴らしさはもちろんのこと美しさとカッコよさは筋金入りでもあります。この日紹介していた本にはプロポーションを維持することや美しくあるための心掛けが存分に書かれているそうで、まさに必見だと思いました。また番組ではご自身が本の紹介をしており、声としゃべり方はとても品がありしなやかでした。お話の中で「しゃべる速度はゆっくり」とおっしゃっていて、話し方も自分を表現するための大切な所作だということを改めて知りました。そして最も驚いたことは50代後半に差し掛かった今でも30年前と洋服のサイズは変わらないということでした。スタイル維持のために食事の摂り方にもかなり気を使われているようです。よく噛む事やバランスのよい食事を日々摂取してすることを心掛けているそうで、日頃の努力がどれだけ大切かを改めて学んだのでした。
「こんな風になりたい」と憧れの意を抱いている人のことを知ることは学びの宝庫です。この書籍を購入して「美しくあること」についてじっくりと考えてみようと思っています。
足の赴くままに訪れた街
ある日の午後、電車に乗り少し遠くへ出掛けました。郊外の街を出発して高層ビルが立ち並ぶ都会へ足を運んだのでした。車中で読書をしながらふと顔を上げて窓の外を見たら、たくさんの人々が行き交い、雑居ビルやオフィスビルが立ち並ぶ光景が目の中に飛び込んできました。その風景はとても活気を帯びていて生命力を感じたのを覚えています。そしてもう少しで到着するだろう駅は以前よく訪れたことのある古本屋や情緒ある喫茶店などが並ぶお気に入りの街だと気付いたのでした。当時古書店巡りをよくしており、購入した書籍を片手に地下にある喫茶店へ足を運び読書を楽しんだものです。そのお店のほろ苦くてすっきりとしたコーヒーの味、豆を煎っている時のにおいは私の心の中にひそやかな思い出としてずっと保存されていたのでした。そのため懐かしくなり、途中駅で下車して古本屋街を訪れたのでした。あの頃と変わらずとてもよい時間が流れていて、コーヒーの香りも健在でした。買い物を楽しみ、かぐわしきコーヒーを飲んで家路に着きました。誰しも「懐かしいあの頃」があるものです。そこを巡る機会が思いも寄らず訪れたら、足の赴くままに行動することをお薦めします。それは過去と現在を結ぶ素敵な架け橋だからです。
ダンディズムに酔いしれた週末の黄昏時
とある週末の夕刻、とってもムーディーなラジオ番組を聴きました。楽しい週末が終わろうとしている時間帯にぴったりな音楽とトークはとても心地良かったです。この日のゲストはエッセイストで元週刊雑誌の編集をしていた男性でした。声はとても渋く、またトークは「大人」を感じさせる凄みを帯びており、発せられる言葉全てに新しい発見がありました。その貫禄に圧倒され、私はまだまだお子様だと感じたのでした。
「どんな時でも優しく落ち着きがあり人生を楽しむこと」これは男性が語った「男の美学」です。自分のモチベーションがよい時は実践できることですが、調子が鈍っていると自らの感情に任せてしまいこの言葉の通りには上手くゆかないものです。そのため「どんな時でも」というフレーズは、非常に意味があると感じたのでした。
音楽番組だったこともありゲストが選んだ曲も幾つか流れたのですが、これらもまた渋くてウィスキーやワインを片手に聴きたくなるような曲でした。生き方も趣味も全てにおいて「ダンディズムを極めている」と知り、このエッセイストに出会えたことを嬉しく思いました。
人生を謳歌して楽しむことを心得ていて、粋も甘いも経験してきた人の言葉にはとても重みがあります。近々ラジオで流れた曲を聴きながら、この方の書いたエッセイを読んでみようと心に決めています。
図書館で過ごした心地よい時間
平日の午前中に近所の図書館へ行ってみました。日差しが温かくて気持ちがよかったので散歩がてら面白い本を借りたいと思い訪れたのでした。いつもはあまりこの時間に訪れることが少ないためか、平日の朝の雰囲気はとっても新鮮でした。なぜならばとても静かで人数もまばらで、ゆっくりとした時間が流れていたからです。新聞コーナーに腰かけて英字新聞に目を通している女性、窓から太陽の光が差し込む場所に置かれている椅子に座り気持ち良さそうに本を読む男性、あまりの気分の良さにうたた寝をしている人など、それぞれが心地よさそうに過ごしているのを眺めているだけで幸せな気分になるものです。私はいつもたくさんの人が利用している大きくて柔らかな椅子に腰かけて、料理や生活に関するエッセイが並ぶ棚から本を取り出して読むことにしました。この空間を独り占めしているようなちょっと贅沢な気分を味わいながらまるで時が止まってしまったような、そして建物の外で起こっていることとは全く無関係で世間の流れから取り残されているような不思議な錯覚を覚えたのでした。小一時間ほど読書を楽しみ、丹念に棚を見ながらいつもは手を伸ばさないようなジャンルの書籍を借りて家路に着きました。今後もたまには忙しさを忘れてこうして伸び伸びと読書を楽しみたいと思っています。
呼吸と姿勢を整えることで見えてくること
今読んでいる本は私の背筋をピンとさせてくれる作品です。お坊さんでもあり大学で教鞭をとっている男性が手掛けた「仏教と禅」についての随筆は、地に足を着いて生きるための大切なヒントがたくさん書かれています。そのため何気ない日常に丁度よい塩梅のスパイスを与えてくれると感じるようになりました。
この本にはシンプルに生きることや呼吸をすること、背筋と頭の先が一直線になるような美しい姿勢を保つことが書かれています。一見これらのことは共通点が無いように思えますが、姿勢と呼吸と生き方はとても密接に連携していることを教えてくれました。私の知人でヨガのインストラクターを営む女性も呼吸を整えて、肩の力を抜き美しい姿勢を保つことで何事にも動じない強い心を築く一歩を踏む出すことが出来ると言っていました。そのことがずっと頭にあり、今読んでいる本から彼女が発した言葉の意味を改めて知る事ができます。そして私も肺をフル活用するように背中に空気を入れるような呼吸をすることで、緊張した時も焦らずに心を落ち着けて物事を考えることに努めるようになりました。そんなちょっとした気付きに目を向けていると体や心の変化にも敏感になるようです。少々窮屈な生き方を強いられても、心の持ちようで今ある状況をよい方向に転換することが出来ることを学んだのでした。
想像力を膨らませて読む小説
イマジネーションを掻き立てられる小説が最近のお気に入りです。以前はどちらかというと起承転結がしっかりとしたストーリーを好んで読んでいたように思います。しかしながらいつの日からかひっそりと心の中に響き渡るような余韻が残るような、抽象的な小説を手に取るようになりました。そのきっかけとなったのは、海外文学の翻訳も手掛ける男性作家の短編小説に出会ってからです。淡々としていながらも言葉が身に染みる描写は、登場人物の心情やエンディングの後に続くだろうストーリーを想像させる楽しみを与えてくれたのでした。
今読んでいる小説もまたそんな余韻が残る寓話のような物語です。海外旅行中に人質となった日本人達が一人ずつ囲われている場所で朗読会をすることになり、その話が集められた作品です。彼らが語る話はこの世に起こっていることですが、どれも私が生きている次元ではないところで起きたことのような感覚を抱かせます。またどのエピソードにも死や別れが散りばめられており、それらが自然の営みとして私達の生活に根付いていることを気付かせてくれるのです。ドラマティックな展開をみせるわけではありませんが、一度読み始めるとなかなか本を閉じることが出来ないくらいに、どっぷりと作品の中に身を置くような楽しみを味わうことができる心地よい作品だと感じています。
豊かで幸せであるために選ぶライフスタイル
本屋や図書館を訪れるとライフスタイルや現代社会のひずみについて書かれたルポやエッセイなどをよく目にします。貧困や不景気の波により、人々は様々な困難を強いられていることをそれらの作品から知ることも多々あるものです。その反面以前よりも個々の価値観を大切にしたライスタイルを選ぶ人も増えたように感じるのは私だけでしょうか。例えば自給自足の暮らを綴ったもの、自らやりたいことを仕事にするために起業する人々、金銭という形に捕らわれずに生きることを提案する本などもよく目にするようになりました。これらの作品を読んでいると富や名誉だけではない幸福の形があることに気付かされます。中でも最近出会った豊かな節約術について書かれた本はいい意味で衝撃を与えてくれたのでした。
著者は年収100万円で生活するツワモノです。食べたいものを食べて、やりたいことしかやらない生活を20年程続けてきたらしく、まさに最強という言葉がふさわしいと感じます。しかも節約術がまったく窮屈ではなくて、ゆるくて無理をしていないところに好感が持てました。料理が得意ということもあり安い予算で食べたいものを作り、仲間を読んでホームパーティーまでやってしまうところは、節約だけをテーマにしていたら出来ないことだと感じました。何よりも本人が豊かで幸せな暮らしをしていると語っているところが印象に残っています。この書籍を読んでいるとお金に縛られずに楽しく暮らす方法を改めて考えるようになったのでした。
旅行記が満たしてくれる私の願望
無償に旅をしたくなることがあります。今あるここから違うところへトリップして新しい人に出会い今まで触れた事のない生活を垣間見たいと思う時、その願望は一層高まってゆくものです。しかしながら気のみ気のままに実行できないのが現実でもあります。そんな時、私は旅についての随筆や小説などを読むことにしています。夜眠る前にそれらを手にすると、ワクワク感が湧き上がってきて翌日の朝を迎えることが楽しみになるし、何よりも異空間にいるような心持ちで眠りに着くことは格別だと感じています。
生活の一部となりつつある随筆の中でとびっきり心に残っている作品に、女性作家が書いたバリ島旅行記があります。学生時代にこの作家の小説を読んで以来、ファンになり年齢を重ねてゆくなかで何冊かの作品を手にしてきました。どれも日常にある機微が描かれており、登場人物達の生活感がしっとりと伝わってくる素敵な書籍達でした。先に挙げた本は特に印象的で、不思議と神秘が共存する島での時間を筆者と供に滞在しているような感覚を与えてくれる素敵な随筆です。読み進めてゆく中でバリの空気を私も肌で感じてみたいと思ったし、大好きな仲間達と旅をすることの楽しさを改めて知ることができたのでした。もしいつかバリ島を訪れることがあるのなら、お気に入りの随筆をバッグに入れて飛行機の中で読みたいと熱望しています。