小説を読んでいると「これは筆者が本当に体験したことなのだろうか」と思うことがあります。なぜこんな思いを抱いてしまうのかと考えてみると、そこにはリアリティが存在するからだと感じます。そのリアリティは登場人物のちょっとした仕草や言動に紐付くことが多いものです。発した何気ない一言や心境についての描写、仕草など気付きに至るきっかけは様々なのです。
先ほど読み終えた短編小説には「妙に信憑性があるリアリティ」が散りばめられており、著者の心の中のとっても深いところを覗いてしまった罪悪感のようなものが沸き上がりました。それほどまでに著者の内面を彷彿とさせた作品だったのでした。主人公は就職活動にやる気を見出せない女子大生です。うだつが上がらない日々を過ごしながらも転機が訪れ、現状から飛び出し面接に向かうところで終わります。ツテで仕事が決まりかけたにも関わらずそれを蹴って自分の道を歩く学生の意志の強さに惹かれました。それは自立と成長を感じたからです。そしてこの作品を書いた女性もまた小説の主人公のような太い心髄があるからこそ書くことができた作品なのだと思いました。美しくて神秘的な容姿を持つ著者の心を垣間見ることができた小説に触れたことで、より一層この作家を好きになったのでした。