仕事に行く途中急いで歩いていると、私の背後から男の人の声が聞こえてきました。「お姉さん。お姉さん」と呼ぶ声が。周りに人は誰もいなくて、少なくともお姉さんと呼ばれているのは私らしい、と気が付いて声の方を見てみると、50~60代くらいの男性が仰向けで道路に横たわっていたのです。あまりの意外な姿に唖然としましたが、その男性は「ちょっと起こしてくれないかな?」と私に言うのです。
その時は酔っ払いかな?と不信に思ってしまいました。すぐには動けないでいると、その男性は「お姉さん。ちょっと起きるの手伝ってくれないかな?」と続けます。私の頭の中には、急いでいるのに、とか、変な人じゃないのかな?といった疑問がわき上がってきて、すぐには行動できませんでした。しかしその男性は酔っているふうでもなく、本当に動けないようです。そこで意を決して、腕をつかんで起こしてあげました。上体が上がっただけで、男性は「ありがとう。もう大丈夫。ありがとう」と何度もお礼を言ってくれました。体が不自由な男性のようでした。私は、少しでも躊躇した自分が恥ずかしくなってしまいました。もっと早く起こしてあげればよかった、と後になって思いましたが、それは後悔というもの。人に親切にするのは難しいことですね。