自然は時として驚異をもたらしますが、私達の生活に豊かさを与えてくれるものでもあります。ある晴れた朝のこと、玄関先に置かれていた鉢植えのハーブが枯れてきていることに気付きました。それを発見した時切ない気持ちになりながら、植木バサミで枯れてしまっている葉と茎を切り落としたのでした。枯れていた葉が無くなり土と少しのハーブだけになってしまった大きな鉢植えを見た時、小さくて濃い緑の葉が幾つも顔を出していることに気付いたのでした。その小さくも美しい葉から生命力を感じ、私の心に強いパワーを感じました。移り変る命を感じる場がこんなにも近くにあったことに嬉しく思ったし、幸福感を抱きよいことが起きそうな予感がしたのでした。
動物や植物は素直で本能的です。自然の営みの中で生きるためには、私達人間のように躊躇したり考えたりするよりも直感で動くことで命を守ってきたからです。以前読んだ小説にも、人と自然の興味深いエピソードが書かれていました。人里離れた山に籠り数ヶ月を過ごした青年は激しい雨に当たりながら、生きることを問います。その激しい雨や生い茂る森の木々は彼に命の存在意義を投げかけたのでした。不安や葛藤を持った時、自然がもたらす現象や命は、私達に新しい感覚を与えてくれるものです。それは都市で暮らしていてもアンテナを張っていれば捉えることができるものだと思います。人間がこの世の全てを作っているというおごりを捨てた時に得ることが出来るものは、時に大きな影響力となり価値観をも変える力があるのではないかと感じるのです。