ある晴れた日の夕方のことです。まだ傾き始めた太陽が元気に照らしていて、外はゆるやかな日差しが注いでいました。私は部屋で一人本を読みながら、窓から入ってくる風の心地よさに身を任せるようにうとうとしていました。居眠りからふと目を覚ました時、あまりの静けさに自分がいるところが何処か分からない錯覚に陥ったものです。普段は子供が遊ぶ声や近所の人々が犬の散歩をしながら井戸端会議をしている声で活気がみなぎっているのですが、車が走る音と干しているタオルを止めている洗濯バサミが風で揺れる音以外は聞こえてこない不思議な時間でした。まるで時が止まってしまったような、異次元の空間にいるような感覚が脳裏に焼き付いています。そして目が覚めて読書を再開した頃、どこからともなくコーヒーのいい香りが漂ってきてこの世に私以外の人がいることを覚え、ちょっと安心感を覚えたものです。その後私も苦くて美味しいコーヒーが無性に飲みたくなり、大きなマグカップに並々とコーヒーを入れて味わいながら飲みました。
心地よい空間でゆっくりと静かに読書をすると、とても集中して本を読むことができるものです。そして私はこうした時間をとても気に入っています。友人や家族と語らいながら食事をすることやワイワイお酒を飲むのも本当に楽しいことですが、静寂と風の音を感じながらゆっくりと部屋で過ごすことも私の人生には必要なのだと感じます。そのお供にはやはり本が必需品です。